家業である地域の不動産業を継ぐ二代目の古川さんは、管理する集合住宅は170戸にも及び日々奮闘している。そんななか新しいオフィスを立ち上げることを契機に全住戸にアンケート調査を実施。日常の暮らしにほしいもの、足りないもの、将来の夢などについてていねいなヒアリングを行った。その結果、見えてきたのは、夫の出張のための引っ越してきた多くの子育てママたちが知り合いも少ない土地で孤独を感じていること。そこでオーナーはだれもがじぶんらしい生活を実現できるキッカケとなるような場所をつくることを計画。交通量の多いY字型の道路の分かれ目に立つ古いラーメン店を改修し、1階は入居者を中心としたコミュニティスペース、2階はオーナーのオフィスとして活用し、敷地の先端部分には小さなあずまやを建て、本体との間を中庭デッキスペースに。そうすることで子どもたちも安心して過ごせるような外部空間を確保し、まちに開かれた人びとの居場所を目指した。1階は通常はカフェ営業し、オーナー自らがコーヒーを振る舞うことに。ママさんスタッフたちは自分たちの都合の良い時間にシフトに入り、そこで入居者同士の新しい出会いが生まれ、入居者以外のまちの人たちもお客さんとして訪ねて来てくれるように。不動産の価値は、駅からの距離や面積、間取りといったことばかりではなく、まち全体の暮らしのイメージや人との関わり合い、それらを大切にするオーナーの姿勢によるところが大きい。