





林業を中心に先進的な試みを続ける人口1500人の西粟倉村。その村に建つ、たったひとつの保育園。ここで育つこどもたちには、自然を敬い、自然から新しい価値や恵みを生み出せる人間になってほしい。森と人との関わり方を環境、産業、経済といった多様な視点から学んでほしい。そのためには、村の木材はもちろん、人材、技術、エネルギーなど「オール西粟倉」を編集することで、この場所でしかできない新しい子育ての場を計画する必要があると考えた。
比較的小径で短めとなる村産材の特徴に配慮した架構を採用し、村内の木材処理のみで済むような建設を計画。性能上の問題がなくても美観上の理由で検査ではじかれてしまう木材や、通常利用されないフローリングの端材や丸太などを積極的に用い、あえてプレーナーをかけない仕上げに。冬季は木質バイオマスによる熱エネルギーによって、夏季は敷地内に新しく掘った井戸の地下水によって空調をまかなうことで自然共生の自立循環型エネルギーシステムも実現した。
また、地元のデザイナーや生産者らとも積極的に協働してこの施設のために開発した「百年の森林(もり)タイル」が他の施設で使用されるたびに売り上げの一部が村の森林保全へ寄付されるような仕組みも新たにつくり上げた。 この建築やシステム自体が、この村あるいは林業の幅広い可能性を示唆する、こどもたちの教科書になるように願っている。