
病院やクリニックの立ち上げにはさまざまな業種が携わるため、それらを一括にまとめあげるディーラーと呼ばれる職能があり、従来、不動産取得から設計、建設、備品購入から機材リースまで、ほぼすべてがパッケージ化され、決まった下請けに横流しされるという慣習がある。そのため、正当な価格競争や性能評価が起きにくくもなっている。そんななかで資材や建設費の高騰が相まって起こり、分離発注が進み、小規模なクリニックに一般的な設計事務所が関わる機会が増え、この案件はそのひとつ。住宅以上によりシビアな動線計画や空調計画、ネットワーク計画などが要求される医療施設設計は一見敷居が高い「専門領域」ように思えるが、そんなことは全くなく、発注者、受託者とも意識を変えて取り組むことで、これからも業界の特殊性に新しい風を吹き込み、新しい可能性を生み出すことができると思う。