






敷地は古い木造住宅や小売商店が残る大田区の一画。敷地の2/3が計画道路にかかるという条件に対して、この場所で長きに渡って葬祭業を営んできたオーナー家族が抱いていたのは「たとえ建物が1/3になってもこの場所に留まりたい。受付するだけでもいいから、これからもこの場所で商売を営んでいきたい」という想い。そこで、いずれ敷地が小さくなることを見越した「切り取り点線」のような分割可能ラインをあらかじめ埋め込んで建築を描くことになった。 施主の家業である葬祭業はまちのさまざまな行事に深く関わり、これまで、たとえば地元の祭りの際には家の前が詰所となる存在であった。そんな生活/仕事という区別のつきにくい活動が、これからさらに道の延長として行われるような、敷地も道も建築もひとつながりの公共空間として機能できるような建ち方を計画した。 計画道路以外にも、たとえば遺産相続や核家族化などで生活空間を縮小せざるえない状況は増えている。そんな時、住み慣れた場所を離れるのではなく、その地に留まりながら器を小さくすることができれば、建物も住人も全取っ替えするような乱暴な開発から、少しでもまちを救えるのではないだろうか。時代は「増築を前提とした建築のつくりかた」から「減築を前提とした建築のつくりかた」へとシフトすべき時に来ている。