


新婚もしくは子育て中の若いカップルが都心から少し離れた郊外の中古アパートを購入して、じぶんたちのライフスタイルに合った空間へとカスタマイズする。そんな家づくりが増えているいま、彼らの多くに共通するのは、たとえば、じぶんの個室よりも明るく広い共有スペースを重視し、高価な材料の仕上げよりもカジュアルでカスタム可能なものを選ぶということ。今回の依頼者も購入したマンションを自らの価値観でカスタマイズすることを描いていた。「主体的な住み手」に対して建築家は、従来とはすこし違う職能での働きやアプローチを要求される。それは、仕上げやパーツといった「小手先」ではなく、たとえば水回りの位置や構成の再編、デザインと機能を両立させながら将来的に更新しやすい仕組みづくりなど、ふつうのひとたちがこれまで“当たりまえ”としてきたがために知らずにあきめていたことを、新しい方法の提案とともに少しずつ解放してあげることだと思っている。